嘘つきヴァンパイア様


(呉羽……早く、帰ってこないかな)

いつもなら来てもいい時間だが、なかなか姿を現さない。


仕事が長引いているのか、もしかしたら何かあったのかもしれない。


不安が襲い、気持ちを落ち着かせるために無駄に部屋中を歩き回る。


すると、ピカッと空が光ると共にゴロッという大きな音が響く。


「ひゃ…!」


無意識に身体を震わせ、身体を両手で包むように抱く。


(まずい。これは、まずい。呉羽が来てくれるまで、待つなんて、出来ない)


「レシィのところに、行こう」


こうなるのなら、最初からレシィに傍にいてもらえば良かったかもしれない。

後悔に襲われながら、彼女は部屋にあった羽織りを頭からかぶり、部屋を出た。


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