嘘つきヴァンパイア様
***
部屋を出て、彼女はすぐにレシィの部屋に向かった。
レシィの部屋は涼子と同じ階にある。
「なにかあったときのため」と呉羽に言われていたが、肝心の何かがあったのにも関わらず、レシィの部屋は頑丈に錠がかかっていた。
何回か訪れたことはあるが、錠がしてあったのは今回が初めて。
「どうして、こんな時に……」
運がないと、うな垂れるもの、どんどんと音は大きく激しさを増していく。
雨も激しくなり、青白い稲妻も見える。
(こうなったら、呉羽が来るまで、部屋で待っているしかないのかな…)
ここまで来るのにも、怯えながら来たと言うのに、また怯えながら帰るのか。
ギュウと力強く羽織りを握りしめ、部屋に戻ろうと踵を返したときだった。
.