嘘つきヴァンパイア様


***


部屋を出て、彼女はすぐにレシィの部屋に向かった。

レシィの部屋は涼子と同じ階にある。


「なにかあったときのため」と呉羽に言われていたが、肝心の何かがあったのにも関わらず、レシィの部屋は頑丈に錠がかかっていた。


何回か訪れたことはあるが、錠がしてあったのは今回が初めて。


「どうして、こんな時に……」


運がないと、うな垂れるもの、どんどんと音は大きく激しさを増していく。



雨も激しくなり、青白い稲妻も見える。


(こうなったら、呉羽が来るまで、部屋で待っているしかないのかな…)


ここまで来るのにも、怯えながら来たと言うのに、また怯えながら帰るのか。



ギュウと力強く羽織りを握りしめ、部屋に戻ろうと踵を返したときだった。

.
< 262 / 475 >

この作品をシェア

pagetop