嘘つきヴァンパイア様



「きゃ!」

再び空がピカッと光ると共に大きな音が響く。


それに反響するように、ランプの光が一瞬にして全て消え、目の前が暗黒に包まれた。


空が光る瞬間に、室内が見えるだけで、涼子の目にはなにも見えない。


(そんな……これじゃ、部屋にも戻れないよ……)


思わずその場にしゃがみこみ、脚を抱えながら身体を丸くする。

最初はそこまで震えていなかった体も暗くなったせいでブルブルと震えてきた。


身体中の、どこか遠い場所が「怖い」と叫んでいる。

「怖い」「助けて」その二言が脳内を駆け巡る。


(呉羽…どこにいるの……?早く来て……)


「くれ……は……」

そう雷の音にかき消されるような声で名前を呼ぶと、トントンと肩を叩かれた。控えめで、優しい手に鼻を掠める香り。

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