嘘つきヴァンパイア様
「はなし、だと?…なにを話した」
呉羽の言葉にギルドは少し考え込み、腕をくむと背中を向けた。
「雑談だよ。雑談。多分ね。じゃあ、僕はいくよ。これ以上、呉羽の機嫌を逆撫でしたくないから」
そう言うと、ギルドは暗闇に姿を消した。
その背中を見つめていると、呉羽がユノからランプを奪うなり腕を引き歩きだす。
「…あっ」
「ユノ、こいつを部屋に送ってくる。残りの雑務は明日やる」
「はい。承知いたしました。では、ごゆっくりと」
「…え、呉羽…っ」
ムッと口元を引き締める呉羽は怒ってる。咄嗟に涼子は思った。
暗闇で僅かにランプに照らされて見える顔は物凄く怖い。
無言でただ歩き、なにも話してくれない。
腕から伝わる痛みも感じないほど、呉羽が怖いと彼女は感じていた。
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