嘘つきヴァンパイア様


呉羽は優しい。けど、涼子はたまに呉羽を怖いと思う。


(呉羽…怒ってるよね。ギルド様に近付かないって、約束を破ったんだもん。やっぱり、おとなしく部屋にいればよかった)


「…ごめん、なさい…」


雷の音に消えてしまいそうな声で囁くと、呉羽の脚が止まり、涼子を振り替える。



「何か言ったか?」


「だから、その…ごめん、なさい…って。怒ってるよね。呉羽との約束破ったから」

「別に、怒ってない」


(うそだ。絶対に怒ってる)


「その、言い訳かもしれないけど……雷が怖くて……レシィはいないし、呉羽もなかなか来ないから……寂しくて。誰かいないかなって、探していたときに、ギルド様に会ったの…」


「言い訳だな。だからって、抱き締められる必要があるのか?なぜ、振り払わなかった。だれでも、よかったのか?」

「…それは」


なにもいえなかった。いや、なにをどう言えば良いのかわからない。


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