嘘つきヴァンパイア様


「え?あ、いや……祖先を敬うって、言うか……そんな凄い神様を呼び捨てには出来なくて……つい」



「もう、いないんだ。そんな気を使う必要はない」

「そう…かな」

伸びてきた手が、涼子の頭にふれた。優しく、大きな手。

その手に、包まれれば、彼女は少し生まれたある不安を口にした。


「あのさ、呉羽?」

「こんどは、なんだよ」


「うん……夢はカトレア様の記憶でしょ?……まさか、最近よくみる記憶は……違うよね?私と呉羽の記憶で間違いないんだよね?」


記憶を見るたびに呉羽に報告してきた。そのたびに、呉羽は細かい内容を口にした。



だから、今まで見たものは、涼子の記憶だと信じたい。前世のカトレアのものでなく、自分自身のものだと。


確証もあるはずなのに、彼女は何故だか胸騒ぎがしてならない。



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