嘘つきヴァンパイア様



『そこにいればいいんだ。お前は長い間、この地下牢から抜け出せはしない』


不気味に笑う口元。伸ばされた手が首にまわり締め付ける。顔は見えないがサラッとしたマロン色の髪の毛が身体に僅かに見える。

(あれ、なにこれ……っ)

頭を鈍器で殴られたような痛みに思わず本を落としてしまう。

そのまま片手で頭を抑え、涼子は壁に寄りかかる。


似たような映像を以前にも見た。それはギルドに初めて会ったとき。


鎖で繋がれた映像だった。

マロン色の髪に閉じ込めているところからまたギルドの映像だと涼子は思う。


(なんなの……いつもは見たらすぐに現実になるのに……どうして、ギルド様の映像は途切れ途切れに見えるの?)


「いった……い」


頭痛とは似て非なる痛みに、視界が回転するような眩暈が襲う。そして再び残像が浮かびあがる。


『その力が欲しいんだ。その力を使って、この冥界を滅ぼすためにも』


(ほろ……ぼす?)

「……あ」


脳内で復唱した瞬間、痛みが不思議なことに一瞬にして消え去る。まるで最初から痛みなど無かったのように消え去っていた。


残ったのは「恐怖」だ。言わなくては。このことを呉羽に。涼子はそう思った。



数回にわたるギルドの映像に関して、涼子は呉羽にしっかりと話してはいない。


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