嘘つきヴァンパイア様


今ままで、残像の中で誰かの名前は呼ばなかった。だが、それは無論、同時に自身の記憶だと涼子は思っていた。呉羽も同意してくれたからなお更。


それにも関わらず、呼んだ名は『ケイト』だった。


「どういうこと?まさか……今まで見ていものって、やっぱり」


「あれ、涼子様?」

言葉を続けようとした時、涼子の言葉を遮るように家来達が彼女の存在に気づく。


酷い顔をした涼子と割れた花瓶を交互に見つめる。そして、全てを一瞬で何かを理解したのか、慌てて口を塞ぎ言う。


「あ、涼子様……もしかして、今の会話、聞いてしまいましたか?」


「え、あ……」

(どうしよう。なんて答えればいいの?素直に「はい」と答えてしまったら、私はここにいられなくなるの?そん
なの嫌だ。呉羽がいうことを嘘だなんて思いたくない。私は呉羽を信じているんだもん)


「い、いえ。何か話しているなって思っただけ。そしたら、花瓶を割ってしまって……。ごめんなさい。床、汚しちゃった」


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