嘘つきヴァンパイア様



「もう、いい。お前ら。俺も考え事をしていて涼子と合流が遅れた。だが、気をつけろ。涼子は俺の嫁なんだ。その意味はわかるだろう。とにかく、俺はいまから、涼子を連れ戻しにギルドのもとに行く。屋敷のことは頼んだ」

「は、はい」


ドナは頭をさげ、続くようにテュポンは頭をさげた。だが、隣にいるルカは頭を下げることなく呉羽を見つめ疑問符を投げかけた。


「けど、呉羽様、その必要はあるのか?」


「どういう意味だ」

「いえ。俺はただ、そろそろネタばらしをしてもいいかと。彼女は呉羽様を信じきっている。繋ぎとめる鎖は完成しているんだ。



これ以上、涼子様に優しくする必要があるのか?ギルド様に誘拐された。上手くやってばらしてもらえば」



「その必要はない」

組んでいた手を離し、呉羽はルカを睨みつける。




「あれは俺のだ。この先、いつどうしようと、どうなろうと……口出しされる覚えはない。とにかく俺はいく」

視線をそらし、あきらかに先ほどより不機嫌な顔で呉羽は部屋を出ていってしまった。


(イライラが止まらない。なぜ、ルカにバラすことを促されなくてはいけないのか。意味がわかない。あれをどうするかは俺が決めるんだ。このままでいるか、いないか。全部)



< 387 / 475 >

この作品をシェア

pagetop