嘘つきヴァンパイア様


そう言うとアナは振り返ることなく、涼子の前から姿を消した。

(楓……答えてって、なにを出せばいいの?呉羽はきっと、私にあったら聞いてくるだろう。私はそれに答えなくちゃいけない。こんな気持ちのまま呉羽の傍にはいれないから)


「大丈夫、大丈夫……」

震える体を押され、大きく息を吸い込み、涼子は下界の密林をでた。


月は赤い。攫われた日を同じくらい。そんな月を眺め、数歩あるけば、涼子はふと何かの気配を感じた。

おぞましいような、禍々しい雰囲気に振り向くと、そこにはいつもと違う姿の呉羽がいた。

「え……?」

ブラウンの瞳は紅色に輝き、耳の先は少しとがっている。口元から見える牙。背中から見える悪魔のような羽。

呉羽のようで、呉羽じゃない姿に、涼子は瞬きを繰り返し、呉羽を見上げる。すると彼は涼子に近づいてくる。


「くれ…は…?…って、あっ」


「その姿は?」などと、口にする前に伸びてきた腕に引き寄せられ、涼子の身体は呉羽の腕に包まれた。

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