嘘つきヴァンパイア様
「…呉羽…」
そのような辛い目にあっているのにも関わらず、涼子はいつも呉羽の事を考えていた。
いま、何をしているのか。いま、どこにいるのか。いま…何を思っているのか…そんな事ばかり。
考えても仕方がないことばかり、浮かんで…また、涙をこぼす。
やはり、こんな目にあっているのに、涼子はいまだ呉羽を恨む事は出来ない。
もう一度、会いたい。そう、願うばかりで…苦しくて、辛い。
「…涼子様」
「…?」
そのように考えていると、また、レシィの声が聞こえた。目だけをあけ、横になったまま視線をあげると手にはいつも通り食事がある。
その姿に、涼子は視線を逸らした。
「…いらないよ」
「そのような事を言わずに、食べてくださいまし。もう、何日も何も食べてないです」
レシィの視線の先には、数時間前に持って来た食事が手つかずに放置されている。
「ごめんね…でも、口にしても…戻してしまうから」
「……」
投獄されてから、最初はご飯を口にしていたけれど、慣れない場所と暗闇と冷たさ。それに、呉羽とのことで…だんだんとご飯を食べても戻してしまっていた。次第になにも受けつけなくなり、水を口にするのが精一杯。
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