嘘つきヴァンパイア様
「敬語じゃなくていいから」
「えっ?」
「確かに俺が年上だけどさ」
「あ…ごめん、なさい」
悪いと思いつつ軽く頭をさげる。呉羽の横を横切り引き出しから白いタオルを取りだす。そのまま呉羽に差し出すとその出した手を握られグイッと引き寄せた。
「あっ…」
その拍子にタオルが床に落ちる。呉羽の濡れた髪から僅かに垂れた水滴が涼子の身体に落ちる。
「あ、あの。呉羽さん…」
「まだ、思い出さない?俺のこと。昨日の今朝の今夜だから…まだ無理か」
腰に手がまわされ密着していく身体。昨日より、少し力強い腕に涼子は戸惑いながら呉羽の服をにぎる。
「あの…ごめんな、さい」
「そう…」
「でも、聞きました。呉羽さんのこと」
「俺のこと?」
「はい。呉羽さんは、私の恋人だって」
楓が教えてくれた事実。抱き締められても、不思議と実感はないけれど、楓の言うことは間違いない。そんな自信が涼子にはあり彼女は呉羽を見上げた。
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