嘘つきヴァンパイア様
「わ、わたし!タオル、違うの持って来ます!」
「え、ちょっ」
バスルームに飛びこむ彼女を唖然と見ていた呉羽は肩を揺らしながら鼻で笑う。
そして徐ろに唇に手を伸ばし自身の手の甲で唇を拭った。
「やっぱり、あの女の説得は上手くいったな」
あの女とは楓のことだろう。今朝、彼女を脅し涼子に嘘をつかせたこと。
「しかし、もう少し抵抗されるかと思ったけど…これなら思ってたより早く帰れるな」
唇に触れていた手で耳に聳えるピアスを弄ぶ。そしてテーブルの椅子に深く腰をかけバスルームの扉を軽く睨む。
何を考えているのだろうか。その冷たく不適切でどこか魅惑的な表情からは何を考えているかなど、わからない。
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