嘘つきヴァンパイア様
レンガで作られた洋風の建物。オレンジ色の光を輝かせる街灯。
周囲を外壁が囲んであり、外壁の外は沢山の木が生い茂っている。
「涼子がいた世界とは全然違うだろ」
「本当だ…ここ、都会じゃない」
思わず出た言葉に呉羽は涼子に近付き、窓に手を添える。
「信じてくれただろ?」
「それは、どうだろう。まだ、よく分からない。それに冥界って私のイメージだと悪魔とか大魔王とか…あと、熱いとか火山があるイメージだったんだけど」
「それは人間が勝手に付けたイメージだ。実際は違う」
呉羽は窓から手を離し外の景色に背を向ける。
(人間が勝手に付けた。人間か…)
何気ない言葉に涼子は少しだけ呉羽を信じた。呉羽が仮に人間なら人間が勝手になどと言わないだろうと思ったから。
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