黒水晶
マイと別れ、イサは執務室に戻った。
ヴォルグレイトを刺激しないため、
今、最も話したい相手がいるため、
大急ぎで残りのデスク業務をこなす。
“俺が今やるべきなのは、こんなことじゃない……!
でも、父さんに怪しまれないためにも、やるべきことはちゃんとやらないとな…!
これが終わったら、カーティスに話を聞くんだ!
あの時あわてて通信してきた理由。
フェルトの言っていたことは本当なのかどうか。
全部、確かめるために…!”
何とか仕事を済ませ、執務室を出ると、
偶然なのか必然なのか、通路でヴォルグレイトと出くわした。
フェルトの話が頭をよぎり、今までのように父親と目を合わせることができない。
「公務を抜けて、どこに行っていた」
威圧的なヴォルグレイトの声。
イサは意識的に目を合わせ、
「魔物退治に……」
「それは兵士の仕事だ。
お前は国民の上に立つ者として、やるべきことがあるだろう。
時期王位を継ぐという自覚が、足りないんじゃないのか?」
「申し訳ありません。
以後、気をつけます」
イサは一礼し、ヴォルグレイトの横を通り過ぎた。