黒水晶
非常にいまいましい。
その場の全員が、これまで感じたことのない妖気(ようき)を肌で感じていた。
イサは険しい表情で、変わり果てたヴォルグレイトの姿を見ていた。
“俺と同じで、父さんもカーティスに剣術を学んだはずだ。
カーティスだけじゃない。
エーテルだって、俺達親子にとって大切な人だろ!?
彼女は、ルーンティア共和国の時期王妃となる女性だ……!
それなのに……!!”
毒を持つ植物が生い茂った草原のように、イサの心にはいくつもの感情が絡み合っていた。
「あなたは国王じゃないのか!?
ガーデット帝国を何よりも愛し、国民を守る立場の人間だったんじゃないのか?
なのになぜ……!
なぜあなたは、そんな不純な術を使っているのですか!!
剣術師の誇りを捨てたのですか?
エーテルと戦うことが何を意味しているのか、理解しているのですか?
ルーンティア共和国は、我々の国を繁栄させるため、尽力してくれていたのに……!」
イサは力の限り叫んだ。
体の奥から込み上げる怒りと悲しみ。
感情が持つ独特の熱に、ノドが焼けそうになる。