黒水晶
一時的に動きを封じられていた兵士達は、こうなったいきさつを知らない。
ゆえに、国王ヴォルグレイトを瀕死(ひんし)に追いやったエーテルを、ガーデット帝国の敵として捕まえようとした。
イサが声を張り上げ、それを止める。
「皆、やめろ!
後で必ず説明する!
エーテルは悪くない!」
「ですが……!」
彼らを束ねる兵士の代表者が、イサの制止に反発した。
血の気を失うヴォルグレイトの姿を見て、彼に仕える者は皆、冷ややかな視線をエーテルに向ける。
「カーティス様を殺したのもエーテル様なのではないか」と言い出す者まで出てきた。
混乱しそうになった場を止めたのは、マイだった。
マイは、魔法で彼らの動きをいっせいに止める。
「皆さん、ごめんなさい!」
一言断ると、彼女は時間と空間を司(つかさど)る上級魔法を使い、兵士達の動きを封じることに成功した。
マイをはじめ、テグレン、リンネ、ヴォルグレイト、イサ、エーテルだけが、動ける状態になる。