黒水晶
動かなくなったヴォルグレイトのそばを離れ、マイは少し離れた場所に佇(たたず)んでいたエーテルを抱きしめた。
「けじめとか、敵とか味方とか、どうだっていい!
情けって何?
そんな悲しそうな目をしているクセに、どうして自ら重たいものを背負おうとするの?
魔術師だとか、国だとか、処刑とか、私には分からないことばかりだけど……!
こんなのダメだよ!」
かつて心を通わせた幼なじみの抱擁(ほうよう)に、エーテルは、頬に一筋の涙が伝うのを感じた。
ルミフォンド時代の記憶は消えていても、マイの中には、たしかに昔の優しさや明るさが息づいている。
エーテルはそれを肌で感じた。
「そうね……。イサを追放しなくても済む方法を、私をはじめ、ルーンティア共和国の人間が考えないといけないわね……」
国同士の交流。
王族の規則。
そういったものが生み出した、しがらみ。
目に見えないものでがんじがらめになっていたエーテルの思考は、マイの言動でこっぱみじんになる。