黒水晶
冷たい氷のような雰囲気。
白い装束に身を包んだ色白の男が、ヴォルグレイトの骸(なきがら)をそばで見下ろし、言った。
「不様な最期だったな。ヴォルグレイト」
彼は、いつの間にこの空間に侵入していたのだろうか。
今まで、気配がなかった。
青い瞳に、日光を浴びても日焼けすらしそうにない透明感のある肌。
年の頃は20代前半ほど。
影を背負った暗い表情に、満足げな薄ら笑いを貼り付けている。
一同に戦慄(せんりつ)が走った。
見知らぬ男の顔つきを見て、全員が気色悪さを覚えた。
「何者だお前は。この国の人間ではないな」
イサは仲間をかばうように剣を構え、白装束の若い青年の前に出る。
地獄を色で表現したような赤紫色の髪を、無造作になびかせる男。
落ち着きながらも、彼はこの状況を楽しんでいるような様子で、全員の顔を見回した。
「名乗る必要はないと思惟(しい)していたのだが、まあいい……。
俺は世界を変革する人間、ディレット」
「……ディレット。なぜここにいる。
父のことを知っているのか?」
尋ねるイサのこめかみには、一筋の汗が伝った。
ディレットから、言葉で語り尽くせぬほどの憎悪が湧き溢れているからだ。
まるでイサの弱みをにぎっているかのように、ディレットの放つ空気はイサを圧倒していた。