黒水晶
「ヴォルグレイトらしい終焉(しゅうえん)を迎えたものだ。
欲を言えば、ヴォルグレイトの処刑を実行した者には、狂ったように奴をいたぶってもらいたかった。
ヴォルグレイトが事切れる寸前まで、もがき苦しみ、血の雨を見られるように、な。クククッ……」
全て算段通りと言いだけなディレット。
イサは込み上げる怒りを彼にぶつけた。
「たしかに父は、許されないことをした。
でも、突然現れたお前に、そんなことを言われたくない……!」
ディレットは吹き出した。
「はははは……!片腹痛い。
噂には聞いていたが、本当に何も知らないお坊ちゃまなんだな。
……お前の父は、何の罪もない我がトルコ国の民達を虐殺した。
そう言っても、お前はヴォルグレイトをかばえるのか? イサ王子」
「……! トルコ国!」
イサの胸に、フェルトから聞いた過去の話が苦い風のように流れる。
ディレットの言う通り、ヴォルグレイトはトルコ国を没落させ、保身のために世界中の人々の記憶からその事実を消し去った。
ごくわずかな関係者しか知らない、闇の歴史。
葬り去られた黒い過去。
「ディレット、お前は……」
ディレットが、フェルトやレイルと同郷……トルコ国の出身者であることを、イサを含むその場の全員が理解した。