黒水晶

圧倒的に強いディレットの魔術は、ヴォルグレイトとの戦いを終えたばかりで余力のないエーテルをあっという間に追い詰めてしまった。

普段のエーテルならもう少し持ちこたえただろうが、彼女はマイにかばわれる形で地に倒れた。


イサの剣術でも敵わず、彼はマイの防御壁のおかげで何とかディレットに攻撃できている状態。


“お願い、みんなを助けて……!”

マイは強く願った。

すさまじい速度で消耗してゆく魔力。

エーテルの傷を治癒しながら仲間を守る壁を保っているから、少しつらくなってきた。

ディレットのオーラから感じ取れるように、彼は強い。

技術面だけではなく、精神面においても強力だ。


ディレットから感じられる攻撃魔術からは、体験した者にしか分からない記憶が溢れている。

身内を亡くした過去。

ガーデット帝国の人間に対する憎しみ。


ヴォルグレイトは自分勝手な願望のために2つの国を滅ぼし、イサをも騙し抜いた……。

ディレットの話を通じて、マイもそれを理解することができた。

“イサの様子がおかしかったのは、そのせいだったんだ……。

ディレットが現れる前から、フェルトさんにいろんなことを聞いていたんだね。

ヴォルグレイト様の犯した罪のすべてを……”

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