毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 これは自分で招いた結果だったんだ。

 私が信長の言うとおりにして過ごしていれば、自分の世界へ帰る道が閉ざされなかったというのに。

 私はなんて愚かだったのだろう。

「聞こえていたのか?」

「私が自ら、元の世界に戻る機会を駄目にしていたんですね」

「違う。そうじゃない。お前の責任じゃない。儂の配慮が足らなかったのだ」

「いいんです。信長様はあんなに怒ってくださったのに。本当に、私は何もわかってなかったんですね」

 戦国時代がどういう世の中か。信長は何度も私に話してくれてたのに。

 間者や刺客は、どこにでもいるって忠告してくれてたのに。

 信長の正妻だからって、信長と同じように私を助けてくれるはずなんて無いんだ。

 私が一日でも早く居なくなれば、濃姫様だって喜ぶかと思ったから。

 術師の話をすれば、こちらに来るように仕向ける手伝いを絶対にしてくれると思ってた。
< 101 / 130 >

この作品をシェア

pagetop