毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「噂で耳にしたのだが。『勝利の鍵』を握る女がいるとか。それが目の前にいる女か?」

「お濃のほうが、儂よりも太い情報網があるようだ」

 信長が、ニヤリと笑った。気の抜けない表情だ。

 とても夫婦とは思えない空気感だ。

 甘い雰囲気なんて全くなくて、まるで敵同士みたい。

「ただの女同士の世間話。わたくしは、これで失礼します」

 整った顔の濃姫が、優雅な姿で立ち上がると部屋を出て行った。

 濃姫の姿が消えると、信長が「ふう」と小さく息を吐いた。

「14歳のとき、お濃と結婚をした。織田と斉藤は長く争っていたからな。和睦のための取引だ」

「はい」

「その顔は知っている風だな? 儂はそんなに有名か?」

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