毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「ああ。兄上は、あんたにならきっと……」

「でも私はこの国の人間ではないから」

「あんたがここに来た意味って、兄上のためじゃねえの? よくわからねえけどさ」

 私がここに来た意味……。それが信長のため?

 彼が心休まる場所が私にあるなんて思えないけれど。

「ずいぶんと仲良しになったのだな」

 部屋を出ていた信長が戻ってきた。

 私は立ち上がると、信長に軽く頭をさげた。

「清州城への道中で話していたことについて、話をしていました」

 信長が私の隣に腰を下ろすと、「そうか」と短く返事をした。

「んじゃ、俺は部屋に戻るから」と、信包が立ち去った。

「私が日中に泣いたのが気になっていたようです」

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