毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 笑顔を見せなければ。私はもう元気だという証拠を見せなくては。そう頭では考えているけれど、身体が追いついて行かないのだ。

「信長様」と縁側の方向から声がした。私は布団から顔を出すと、縁側へと視線を向ける。

 縁側には、膝をついている藤吉郎が控えていた。

 信長が私に「ちゃんと食えよ」とだけ、声かけてから縁側へと向かう。

「調査は済んだのか?」

 声を抑えて藤吉郎に質問する信長。きっと私に聞こえないように配慮してくれているんだろうと窺える。

 だけど、私にはしっかり聞こえていた。

「ええ。どうやら、義元宛てに密書が届いたようです。我々が術師をひきいれようとしている、という内容のものを」

「密書の相手は、お濃か?」

「すでに証拠は消されておりましたが、確実かと思われます」

 濃姫がっ!?

 今川義元に密書を送ったって言うの?

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