一億よりも、一秒よりも。
「みんな消えちゃったし、カフェでもいこうか」
 
半年ほど前に誘われた合コン。いつもなら断るそれも、主催が同じ部署のお局さまだった時点で拒否権はなかった。
しかたないとため息片手に参加したものの、相手方はなかなかに良いメンバー揃いで、幸いにも好みの男性がそこにはいた。
 

もう少し気合いいれてくれば良かったかな、そう後悔しつつもゆっくりと距離を縮める。
お局さま主催ゆえ、目立った動きは出来ないものの、なかなかに好感触だった。
 

そう、だったはずだった。
 

一通り食事も終わり、店の外に出たとき、私はひとりで立っていた。

良い感じだったお目当ての男性は結局、部署で最年少のピンクやレースが大好きな女の子と並んで夜道に消えて行った。
それどころかもうそこそこいい歳のお局さまですら、渋めの男性と腕を絡ませてネオンの中へと進んで行っていた。
 
< 3 / 84 >

この作品をシェア

pagetop