一億よりも、一秒よりも。
「あぶれた者同士?」

半ば嫌味で私は言う。

「あぶれた者同士」

彼は眉ひとつ動かさず、トーンだけ変えて復唱した。
そして続けた「たぶん、君が狙っていたのは三原先輩でしょう」ふたりが消えて行った道を指しながら。
 

そこで屈辱的だと私は怒れば良かったのかもしれない。だけど口を開く前に彼が「俺も武藤さんだったんだよね」と臆することなく言ってしまったから。
 
そんなに若い子がいいわけ? という女のプライドが働いてしまった。
それが何よりの間違い。
 
< 5 / 84 >

この作品をシェア

pagetop