一億よりも、一秒よりも。
「なくていいだろ。男なら手で食えよ」
 
言葉通り、モンブランを手づかみし口に運ぶ夏木を見て、思わず笑ってしまった。
ケーキの食べ方に、男も女もないだろう。
 
自分も真似してショートケーキを右手で掴んでみる。
まだ少し冷たいそれは、柔らかく簡単に潰れそうだった。
 
マロンクリームを頬につける友人を横目に、ショートケーキにかぶりつく。
 
甘い、甘いクリームの中に、ほんの少し酸っぱい苺。
 
きっと俺に似合うのはこの逆だろうな、なんて柄にもないことを考えながら、大きな苺を口に入れた。
 
< 74 / 84 >

この作品をシェア

pagetop