一億よりも、一秒よりも。
ああ、そうだ。彼らが歌っているように、俺も謳ってみてもいいのかもしれない。
俺が謳ってみたら、キョウも笑ってくれるかもしれない。
呆れたように、ほんの少しだけ眉尻を下げて「馬鹿じゃないの」

 
太陽が隠れてゆこうとする世界、街灯の乏しい河原。
流れゆく水は徐々に彩度を失って、対岸をジョギング中の学生が走り去ってゆく。
どこからか猫の猫の鳴き声が聞こえてくる。それに応えるように別の場所でまた猫が鳴く。
 

今日のこの行動の結果を、神様なら知っているだろうか。
だけどきっと彼女は言うだろう。
「神様の答えなんて、期待したって何も出てこないわよ」
そして俺もそれに頷くのだ、キョウの眉間に生まれた皺を眺めながら。
 
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