ハレゾラ
意識が戻りつつある中、私は坂牧の最後の言葉を思い出す。
確か“翔平”って言ってたよね?
じゃあ、あの電話の相手は彼だったのかしら?
う~ん……。よく分からないなぁ。
それにしても何だか顔が、温かいものに触れていて気持ちいいんだけど……。
その温かさに頬を擦り寄せると、その感触にうっとりしてしまう。
「おはよう、咲さん」
聞き覚えのある声に、ゆっくり目を開ける。
何故だか彼が私の頬を撫でながら、にっこりと微笑んでいる。
考えもしていなかった展開に驚き、大慌てで飛び起きると、彼から距離を取るよ
うに離れた。
が、そこは医務室のベットの上。後ろ側に転げ落ちそうになる寸前で、彼が私の
腕を引き寄せた。そのまま彼の胸に飛び込んでしまう。
「何回、転んだり落ちたりしたら気が済むの? それとも僕に助けてほしくって
わざとやってるとか?」
そんな事あるわけ、ないっないっなーーーいっ!!!
彼の腕の中からコソッと顔を見上げ、目だけでそう訴えれば、ニヤリと意味深な
笑顔を私に向けた。
しまった……。これって、私が物欲しげに見つめちゃってる図……が出来上がっ
ちゃってるんじゃないっ!!
彼を小悪魔にするには、もってこいの状況だ。
そして私のその考えは、見事的中する。