ハレゾラ
「さっ、兄貴にも頼まれてるし帰ろうか。荷物ももう車に運んであるから」
そう言ったかと思うとすくっと立ち上がり、いきなり私をお姫様抱っこしてしま
う。
こ、ここって医務室ってことは……。まだ職場にいるんだよね?
まずいじゃないっ!! 彼が車を停めているであろう場所まで行くには、社員専用
通路を通らないといけない。そんなところ、この状態で通ったら……。
私、明日から出社できませーんっ!!!
「翔平くん、お願いっ。下ろしてっ!!」
でも彼は聞く耳を持たずで余裕たっぷりに私を見下ろすと、ますます面白くなっ
てきたと言わんばかりの顔をしてからかいだす。
「そんなにジタバタすると落ちちゃうよ。それにもう、職場に皆さんには挨拶し
ておいたから大丈夫」
……絶句です。余計に具合が悪くなってきたんだけど。
何が大丈夫だと言うのか、まったく訳が分らない。
でもこうなってしまった彼には何を言っても無駄だと悟り、はぁ~と溜息ひとつ
ついた。
「咲さん、よく溜息つくよね。それじゃあ僕が苛めてるみたいじゃない?」
「苛めてるでしょっ!!」
はははっと大きく笑いながら、軽々と私を抱き上げている彼。
何よ……。すごく嬉しそうじゃない……。
「バカ……」
恥ずかしさと嬉しさで顔を真っ赤にしながら、彼の首にしがみついた。