ハレゾラ
でも彼の瞳をじっと見ていると、意地悪だけではない真剣な思いが伝わってくる
から厄介だ。


「咲さん、キスしてもいい?」


その甘い誘惑の言葉に、思わず頷いてしまう。
彼の顔が、ゆっくりと近づいてきた。私もゆっくり目を閉じる……。
もう少しで唇が触れる……とその時、自分の今の状況を思い出してしまった。


「翔平くん、ダメッ!!!」


彼の顔を両手で押し戻す。


「痛いなぁ。咲さん、何するの?」

「だってキスしたら、風邪移しちゃう……」


そうだった。よく考えてみれば、ここに来たのだって間違いだ。
一緒の部屋で過ごしたら、彼に風邪が移る可能性が高くなってしまうのだから。


「翔平くん。申し訳ないんだけど、家まで送ってくれない?」

「何で?」

「ここにいたら、翔平くんに風邪移っちゃうでしょ……」

「そっかぁ……うん、分かった。なんて、僕が言うと思う? 病人の咲さんを一
 人っきりにさせるわけ無いじゃん」

「でも……」


次に言葉を言うその前に、私の唇は彼の唇で塞がれてしまった。
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