ハレゾラ
「花田さん? 何一人で考えてるんですか? 咲さんっ!」
「あっ……すみません。って今、咲さんって言いました?」
「うん。いつも心の中では咲さんって呼んでたんです。ダメでした?」
「ダ、ダメじゃないですけど……。私はあなたの名前も知らないわけですし」
「そう言えば、僕まだ自己紹介してなかったですね。すみません」
そう言うと、う~んと何かを考え出す。そして何か閃いたのか、目をキラキラさせて私の顔をじっと見つめた。
「咲さん、今日は何時に仕事終わります? 今晩空いてますか?」
「今晩ですか? 予定は何も入っていませんけど。終わるのは6時頃かな」
「じゃあ決まり! どこかで食事なんてどうです? その時に話しようよ。次のお客さん来ちゃったしね」
そう言いながら私の耳元に顔を寄せ、小さな声で囁いた。