ハレゾラ
「終わったら、西駐車場出入り口の辺りで待ってて」
そう言ったかと思うと、私の耳朶にチュッと柔らかいものが触れる。
私がそれを唇だと気付いた時にはもう、彼は自動ドアから外に出るところだった。
早くしてと言わんばかりに次の客に睨まれながら、レジを通している私の顔は、きっと真っ赤になっていたことだろう。
それからの私は、何をしていても彼のことばかり考えていた。
あんな、告白まがいの言葉を言われたからと言って舞い上がるほど、私は若くない。
でも耳朶にチュッて……。チュッは反則でしょっ!!
まぁ正直なことを言えば、悪い気はしない。と言うか、ちょっと嬉しいかったりして……。
少しばかし、期待しちゃうじゃないかぁーーーっ。
食事くらいは行ってもいいよね。私だって彼の名前くらいは知りたいし。
そうだよ、お互いの事をもう少し知ってもらう為の食事会。
どうせ家に帰っても、一人寂しくご飯食べるだけなんだもん。今日1日くらいは、彼と食事しながら楽しい時間を過ごそう。
きっと私の年齢聞いたら、もう食事に誘われる事もないだろうから……。