ハレゾラ

今日はいつも以上に仕事をこなし、6時には退社できそうだった。
遅番の担当に引継ぎをし、ロッカールームへと急ぐ。
約束の時間にはまだ余裕がある。何も慌てることもないのだが、気持ちが勝手に私を動かしてしまうみたいだ。

うぅ、私、舞い上がってるかも……。

ダメだ、もう少し冷静にならないと。ただ食事するだけなんだ。今晩一回だけのことなんだから……。
そう自分に言い聞かせた。


10月も終盤にさしかかり、風が冷たくなってきていた。
今日は薄手のコートを着てきていたので外で待っていても、それほどは寒さを感じない。
ちょっとウキウキして身体が勝手に動いてしまうのを必死に押さえ、キョロキョロとあたりを見回していると、目の前にブルーの車が止まった。


「ごめん。待たせちゃったね」


そう言いながら運転席から下りた彼が、私のところまで来てくれる。そしてゆっくり助手席のドアを開けた。


「はい咲さん、どうぞ」


背中にそっと手を当て、私を軽く押す。
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