ハレゾラ
そんなこんなで、目的のお店に到着する。
駐車場に車を停めると、彼はすぐに車から下り、さっと助手席側に移動してドアを開けてくれた。
「はい、お疲れ様」
また手を差し出してきた。あまりにも、いつもやっている事のように手を差し伸べてくるから、私も何の躊躇いもなく手を差し出してしまった。
彼が俗に言う『恋人繋ぎ』をしたのには少し驚いてしまったけれど、とても柔らかな彼の手の感触に、私は身をゆだねる気分になってしまっていた。
そのまま店に入っていくと、店長らしき人物が私達に気付いた。
「翔平、奥の個室空けてあるから」と言って軽く手を振り、挨拶を交わすところを見ると、この店は彼の馴染みの店だと言う事が分かる。店員たちも、彼と仲が良さそうだ。
「翔平さん、いらっしゃい」と一人の店員が声をかけてきた。
彼も「おうっ」と返事をし、空いている方の手で店員と肩を組む。
そして、その後の彼と店員の話を私は聞き逃さなかった。