社長の溺愛・番外編



薄いメモをテーブルに置き、その足で自室へと向かいながらネクタイを緩めジャケットを脱ぐ


どうせ3連休ならひとりでゆっくりするより愛しの翼と過ごしたほうがよっぽど良い


手早く荷物をまとめ、車のキーを手に取ると今しがた帰ったばかりの我が家を後にする



家出したらしい猫を迎えに行くために



――――数十分後



最近ではもう懐かしみすらも感じない実家の駐車場に車を止めさっさと玄関口へと向かい、インターホンなんて見て見ぬふり


無遠慮極まりなく扉を引けば玄関まで香ってくる甘い香りに眉を潜める


何か良からぬことでもしているんじゃ…なんて馬鹿げた考えを浮かべながらも乱暴に靴を投げ捨て家にあがった



ガチャリ、リビングへと繋がるそれを開け中に入れば沢山の瞳に見つめられた



「慎!」



そのなかで一番始めに反応し駆け寄って来たのはもちろん今日も可愛い翼


ぴょんと跳ねるように抱きついて来た彼女からも甘い香りがする


その可愛さに思わず今すぐキスしてしまおうかと抱き寄せれば制止する声が挟まる



「慎、来るなら言ってよ~」

「せっかくつーちゃんと楽しんでたのになー」

「あれ?慎もう仕事終わったんだ」



シンプルなエプロンを身につけた母さん、恐らく翼にでれでれだったであろう父さん、それに仕事が俺より早く終わり帰ったはずの幸弘



幸弘に至ってはもう慣れたが両親がここまで翼を溺愛するとは…



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