ライアーライフスタイル

午後5時半を回った頃。

「おーい。早く帰らないと暗くなるぞー」

教師の見回りによってこの日の練習は終了した。

私たちは一緒に学校を出て、途中まで一緒に帰った。

「つる子、ありがとな」

分かれ道で別れる際、山村は私に笑ってそう言って、親しげに手を振ってくれた。

このことは私の初恋において、最高にハッピーな思い出だ。

後にも先にも、この時以上に胸がときめいたことなどない。

しかし数日後、音楽の時間。

担任の何気ない言葉のせいで、私の世界は狂いだした。

「やまむー、つる子と遅くまでリコーダーの練習を頑張ってたんだってな」

クラスがどよめき、私と山村は固まった。

担任としては、努力した山村と熱心に指導した私を褒めたつもりだったに違いない。

しかし、この事は決してみんなに知らせないでほしかった。

だってこんなことが知られたら、みんなは私たちの関係を勘繰りだす。

「つる子と二人ってどういうこと?」

「やまむー、まさかつる子が好きなの?」

そして私に対する嫉妬が膨らみ、思考は悪い方へと流れていく。

「ていうか、なんでつる子なの?」

「つる子のくせに、抜け駆けとか生意気」

< 153 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop