ライアーライフスタイル
聞こえてくるのは女子たちの僻みに満ちた陰口と男子の下世話な冷やかし。
「やまむー。お前の彼女がひとりで本読んでるぞ。構ってやれよー」
「あんたたち、バカじゃないの? やまむー困ってるじゃん」
男子が私のことで山村をからかうと、女子がヒステリックに噛みつく。
私の方は男も女も関係なく「つる子、やまむーに告白したらしいよ」などと事実無根の噂をでっちあげられ、嘲笑の対象になった。
たった小一時間、私と山村が共に過ごしたせいで、クラスの雰囲気はどんどん悪化していった。
当事者の二人を差し置いて、周りの勝手な憶測と下世話な醜聞ばかりが一人歩きしていた。
私も辛かったが、山村もきっと辛かったと思う。
そして間もなく、とうとう一人の女子が山村に詰め寄った。
「ねぇ、やまむー。やまむーはつる子のことが好きなの?」
山村はそれまで、みんなを宥めるようにヘラヘラ笑って「やめろよ」とかわしてきた。
なかなかハッキリ否定しないことに、彼を好いている女子たちは焦りや怒りを感じていたのだろう。
ブスなつる子にやまむーを取られたとなると、格好がつかない。
だから彼女らは、山村からの「つる子なんか好きじゃない」という言葉を欲しがっていた。