私の片想い事情 【完】
目の前でにこにこ笑っている菅波君の笑顔は眩しすぎて、何だか気が重くなる。
あの生意気な瀧川君みたいにイライラすることはないけど、やっぱり美少年って苦手。
「じゃぁ、始めましょうか?」
私は卑屈な自分の思いは心の隅に除け、隼人の生徒ファイルを菅波君の前に置いた。 その厚さ約10センチ。
「えっ……こんなにあるんですか?」
「そうなの。指導するからにはちゃんと生徒のこと把握しておいてね?」
「は、はい」
同じように驚いてみても、瀧川君と菅波君どうしてこんなに違うのだろう?
いいのよ、ゆっくりでいいから、なんて言ってあげたくなっちゃう。
「今日のクラスは?」
「ああ、今日は日曜日だからクラスはないの。一般にオープンしているだけ。でも、自主練で来る生徒も多いからちょっと見てあげてくれる?」
「はい。あのぅ……」
ファイルの中から特に気をつけないといけない幼児クラスのページを開いていると、菅波君が心配そうな顔で尋ねてきた。