私の片想い事情 【完】
「ねぇ、ドア開けっ放しで何喧嘩してんのよ?廊下にまる聞こえよ」
そんな沈黙を破ってくれたのは、亜紀さんだった。
「亜紀さん……すみません」
「挨拶もないの?」
「「あっ、おはようございます」」
私と菅波君はあわててハモるように亜紀さんに挨拶をする。
隼人は無言のままドカッと事務所のソファーに座った。
「何カリカリしているの?掃除の時間でしょ?さっさと着替えに行きなさい」
「ハイ」
素直に返事をする私を余所に隼人はまだぶすっとしたままだ。
亜紀さんはそんな隼人は無視し、菅波君へと視線を動かす。
「あなたが菅波陽斗君?宮本亜紀です。亜紀って呼んでね」
亜紀さんはにっこり笑って菅波君の手をぎゅっと握る。
その妖艶すぎる笑顔に、菅波君の顔は真っ赤になった。