私の片想い事情 【完】

朝から私の心拍数を一気に跳ね上げ、そしてため息を漏らさせる、あの男が私がずっと想いを寄せている相手。


彼の名前は、西崎隼人(にしざきはやと)。


年は私と同じで、私と隼人は高校の時からの付き合いだ。そして、友人歴イコール片想い歴となっている。


友人と言っても、私たちは同じ高校だったわけではなく、通っていたスイミングスクールが一緒だった。


私の専門は競泳の平泳ぎで、隼人の専門は他でも珍しい飛込だった。


17の夏、初めて隼人の飛込を見たとき、幸か不幸か私は完全に彼の虜となった。


隼人の飛び込みは、しなやかで綺麗、そして力強い。あの時、ぎゅっと心が鷲掴みにされたのを覚えている。


定番の「一目惚れ」と表現するには余りにも簡単で、隼人が水面に吸い込まれるように落ちたと同時に、私も一気に恋に落ちた。


その後は、水面に広がる波紋のように、隼人は私の心の中に浸食していった。


そして、それが6年にもわたる私の片想いの始まりだった。




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