私の片想い事情 【完】
こ、これはどう反応したらいいの?
もぞもぞと逃れるように身体を動かせば、またクスクス笑われた。
「かわいい」
はぁ?どこが?
目を見開いて彼を見ると、月の光をしょってキラキラの笑顔で私を見つめている。
私は自分の置かれている立場も忘れ、うっわ~漫画の中の王子様みたいな人って本当にいるんだぁと頓珍漢なことを考えていた。
「みなみさん、自分のこの状況わかっている?」
「へ?」
間抜けな返事をすると、瀧川君の顔がまた迫ってきた。
キスをされると顔を横に背ければ、衝撃の感触が耳全体を包んだ。
ペロンと耳を舐められ、私の身体はこれまでないくらいに弓なりに跳ねた。
「きゃぁ……っ」
「シっ……黙って感じて?」
何をーーーーーー?と逃れようと身を捩れば、離れたかと思った瀧川君の唇は、耳たぶから耳裏をペロっと舐め、耳孔に舌を入れてきた。
心臓がばっくんばっくん言うし、血液がドクドクと送り出され、身体中の血管が破裂するんじゃないかと思うくらいその衝撃は強く、下腹部に強烈な熱を送り込む。
「や、や、や……あぁぁ……んふ……」
やめてと言いたいのに、口から洩れるのは、自分のものともいえないような喘ぎ声。そんなものは、AVやロマンス小説の中だけの話だと思っていた私は、自分の反応にも、この衝撃にも、どうすることもできなかった。
呼吸を荒げ、水際に上げられた魚のように身体をビクンビクンさせている私は、それは滑稽に違いない。
でも瀧川君は、満足そうな顔で「かわいい」を連呼し、今度は私の唇を犯した。