私の片想い事情 【完】
「みなみさんにすごく魅かれているのは事実。かわいくてつい触れてしまいたくなる」
瀧川君はそう言って、握った手にぎゅっと力を入れた。
「西崎さんが好きなのはわかっているから。でも俺にも少し心開いてよ」
「瀧川君私は……」
私が何か言いかけようとすると、ちゅっと唇に軽いキスを落とされた。
何故か、今度のキスは驚くこともなく受け入れてしまい、そんな自分に驚いてしまった。
「まだ何も言わないで。俺自身戸惑っているんだから」
私が返答に困っていると、瀧川君は、今日一番の素敵な笑顔で、おやすみなさいと言って来た道を戻って行った。
軽く駆け足で帰るその後ろ姿は、それはそれは、青春漫画の主人公のようで、アパートの前で口をぽっかり開けて立ち尽くす私は、とても間抜けな脇役だった。