私の片想い事情 【完】

「いい?みなみが体調崩して休むから、和君も心配して、みなみのペースに合わせようと思ったんじゃない!?どうしてその男心がわからないのっ!?」

「そ、そんな男心わかっていたら、今頃彼氏の一人や二人できてますっ」


私はおでこをガードしながら、亜紀さんに反論した。もうでこピンはこりごりだ。


ビクビクしながら亜紀さんの反応を待っていると、亜紀さんは驚くほど優しい声で、私の名前を呼ぶ。


「ねぇ、みなみ」


はい、と答えればその優しい眼差しは女の私も落ちてしまいそうになるくらい綺麗。


でも続く言葉は、とても辛辣。


「隼人は無理よ、諦めなさい。自分でももう分かっているでしょう?」


優しい声なのに、それは私の心をざっくりと刺す。


「そ、そんなこと亜紀さんに決めて欲しくありません。私が勝手に好きなんです」


反論の言葉と共にこみ上げてくる涙を止めることができない。


そんなこと言われなくてもわかっている。


隼人が私を友達以上に見てくれないことも、この先どんなに頑張っても、その距離を縮められないことも。


亜紀さんは、キラキラ光るシャネルのバッグからハンカチ取り出すと、私の涙を拭いてくれた。


ふわっと良い香りがして、それがますます私の涙を誘った。




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