私の片想い事情 【完】
次の日、目覚まし時計もセットせず、ただ惰眠を貪ろうとベッドの中でぐだぐだしていると、思わぬ人からの着信で飛び起きた。
携帯を手に、出ていいものか固まってしまう。
電話の主は諦めることを知らない。永遠に鳴り続ける着信音に根負けした私は、恐る恐る携帯に出た。
「はい……」
「みなみちゃん、寝てたかしら?」
私の掠れた低い声とは対称的に、一オクターブ高い声が耳元にあてた携帯から聞こえてくる。
これはかなり機嫌が良い証拠。旅行でも行くのかな?と考えていると、みなみちゃん、と再度呼ばれた。
「はい。おはようございます、静香さん」
「おはよう、って今はもう昼過ぎよ!寝すぎよ、みなみちゃん」
「昨日の夜、寝つきが悪くて。それで、どうしました?」
「そうそう、みなみちゃんにお願いがあって」
ああ、やっぱり、と携帯を見つめると、耳につけてなくても聞こえてくる甲高い声に、今日は勘弁して欲しいと心底頭を下げた。
「みなみちゃん、聞いてるの?」
「はい、聞いてます」
「今日から一週間、パパと旅行に行くから、隼人と彰人のことお願いしたいのよね?」
やっぱり、と私は項垂れる。
そう、電話の主は、隼人の母親、静香さん。
いつも旅行に行くときは、必ず私に「お願い電話」をかけてくる。
いつもなら、尻尾振って飛びつく、彼女のお願い。
だけど、今日は―――