私の片想い事情 【完】
そして、結局私は今、西崎家の前でピンポンを鳴らしている。
勿論両手にスーパーで買い物してきたエコバッグを抱えて。
3回鳴らして隼人が出てこないときは、庭においてある赤色の鉢植えの下にある合鍵を使って入っていいことになっている。
3回目……しばらくたっても誰かが出る様子はない。
荷物をドアの横に置いて、庭に向かおうとしたとき、ガチャと玄関のドアが開かれた。
思いっきり機嫌の悪そうなその顔は、明らかに寝起きで、それでも私が来るのは分かっていたみたいだった。
「みなみ、うるせぇよ。ピンポン鳴らさず入ってこいよ」
寝起きの掠れた声、そして、上半身裸。伸びた前髪がざっくばらんに落ちていて、その間から細める目が何とも言えない。
見慣れているはずなのに、今日の隼人は不機嫌なせいか、すごく色っぽい。
「すげぇ荷物だな……」
その言葉に、慌ててエコバッグを手に取り、「おはよ」と挨拶した。
もう2時過ぎなんだけど、そんなことどうでもいい。
ドキドキ鳴る心臓を落ち着かせようと、そさくさと中へ入った。
玄関でサンダルを脱いでいると、ひょいっとエコバッグを取られ、隼人はスタスタとキッチンへと入って行った。
亜紀さん、無理です。この何気ない隼人の行動に、私はときめきっぱなしです!そう心で懺悔して、急いで私は隼人の後を追ったのだった。