私の片想い事情 【完】
でも、手のつけられない酔っ払いは逃してくれない。
「みなみ何で逃げるの?」
何でって……
ああ、ダメだ。今日の隼人は甘えたモードだ。
匂いをかぎながら、首筋に唇を這わせてくる。
その仕草は、性的というより、犬が匂いを嗅いでいるような感じだが、私には十分刺激が強い。
さらに、今日は俺の匂いをつけておく、なんて言い出すものだから、私の心臓は壊れそうなくらい早鐘を打ち、今にも破裂寸前。
「みなみの心臓ドキドキ言ってるな」
おかしそうに笑う隼人は、回した手で背中を撫で、髪をかき上げ、私にあれこれしてくる。
でも、クスクスからかうように笑う隼人に、私の頭の中はだんだんと冷静になる。
相変わらず、鼓動は早く、触れられたところが熱を持つように熱いけど、一人そんな風に舞い上がっている自分がひどく滑稽に見えて、悲しくなった。
ねぇ、隼人、何でそんなことするの?
私があたふた慌てるの見てて楽しい?
それとも私を試しているの?
今の私は自分がわからないよ。
こんな風に隼人に触れられれば、嬉しくて、恥ずかしくて、ドキドキする。
でも、それって自分がそう暗示かけているから?
ねぇ、隼人。私は隼人の傍にいたいと思うのに、それが本当に隼人を好きなのか自分の気持ちがわからないよ。