私の片想い事情 【完】
私が抵抗しないと分かると、隼人の手が止まった。
ほらね、やっぱりからかっているだけだった。
抵抗したら面白半分で更に私の反応を煽るくせに。
瀧川君の名前を出して、私を動揺させて。そうやって隼人は私の気持ちを試しているんだ。
前に瀧川君が言った、「男って恋愛感情とは別に変な所有欲があるんですよ」って、その意味今なら何となくわかる。
でもね、こうやって抱きしめられているだけで、私の心は泣きたいくらに切ないんだよ?
こんなに苦しいのに、どうしてこれがおままごとの恋みたいに言われなきゃいけないの?
この胸の苦しみも思い込みから?それなら、さっさと暗示から解放して欲しい。
その方が私はずっと楽になれるから。
ちゃんと友達として隼人の傍にいるから。
「みなみ?」
大人しくなった私を気遣うように隼人が名前を呼ぶ。
もう少し名前を呼んで欲しくて、私は聞こえないふりをした。