私の片想い事情 【完】

「みなみ?」


心配そうに見つめる亜紀さんの瞳には、少し後悔の色が見えて、私はとっさに笑顔を作った。


そっか、あの時隼人は私を受け入れなかったけど、亜紀さんは大丈夫だったんだ。


隼人は身近な人間には手を出さないと思っていたのに……


「酔った勢いで、隼人には殆ど記憶がないわ」


弁解するように話す亜紀さんは、やっぱり伝えたことを少し後悔しているようだった。


それでも、隼人は亜紀さんと寝たんですよね、と心の中でそう問う。


「みなみに悪いと思ってないわ。隼人も私も身体だけと割り切っていたから、次の日も平然としていられた。もう過去のことだし、今もこのことをあなたに伝えるのは間違っていないと思う。傷つけるのを承知で聞くわ。それでもみなみは隼人がいいの?」


亜紀さん、あなたって本当に……


そんな風に悪ぶらないでください。本当はこんなこと私に言いたくなかったくせに。


亜紀さんのその強さが羨ましいと思った。


彼女の魅力は、外見の美しさでも回転の速い頭でもない、その強さなんだ、と改めて思った。


私にはない芯の通った強い心―――


「はい、私はそれでも隼人が好きみたいです。あんな風に拒絶されたのに、もう重症ですよね」


私は、きゅっと唇を結び、泣きたい心を必死でつなぎとめた。


「亜紀さん、聞いてくれますか?隼人の女性不信が酷くなった理由も、私を遠ざけるように友達の位置に置く理由も……」


私は、ポツリポツリその時の記憶を辿るように、亜紀さんに三年前の出来事を話出した。




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